鍼灸師とは、国家資格であるはり師ときゅう師の両方の免許を持つ職種です。
鍼灸師は鍼灸院をはじめ、さまざまな職場で活躍しています。
これから鍼灸師を目指したい方のために、鍼灸師の仕事内容や就職先、年収について解説します。
1.鍼灸師とは
鍼灸師とは身体のツボを鍼(はり)で刺激するはり師と、ツボを灸で暖めるきゅう師の両方の資格を持つ職種です。
人間の自然治癒力を活性化させることで病気を治療する施術を提供しています。
2.鍼灸師の施術法
鍼灸師は、鍼(はり)と灸(きゅう)を用いる「はり・きゅう」または「しんきゅう」と呼ばれる施術を提供しています。
鍼(はり)とは
鍼(はり)とは、直径0.2mmの髪の毛ほどの太さの用具です。鍼灸師は患者の症状に応じたツボを指で探し当て、消毒した鍼をトントンと叩くようにして瞬間的に皮膚を通過させ、刺激を与えることで自然治癒力を活性化する鍼治療を行います。
鍼治療は患部のほか、周辺の神経にも刺激を与えたり、皮膚に刺した鍼を電極にし、弱い電流を流したりすることで、鍼の効果を倍増させます。
また、鍼を刺入せず専用の道具で皮膚を摩擦・接触・押圧するだけの鍼治療もあります。おもに小児の夜尿症・夜泣き・疳虫・風邪予防などの治療に用いられています。
灸(きゅう)とは
灸(きゅう)とは、指で患部周辺を押してツボを探した後、ツボに適量のもぐさをのせ線香の火をつけて燃やし、熱の刺激で治療する方法です。皮膚の上ではなく台座の上にもぐさを置く場合もあります。
近年では、艾や火を使用しない機械式の灸なども考案されるようになりました。
3.鍼灸師になるには
鍼灸師になるには、国家資格であるはり師免許、きゅう師免許を取得する必要があります。
はり師試験、きゅう師試験は、認定された専門学校や大学、短大で、はり・きゅうの技能と知識を3年以上修学することで、受験資格を得られます。
視力障害者の方は中学校卒でも5年の教育を受ければ、国家試験の受験資格が得られ、盲学校や視力障害センターなどで学ぶことが多いようです。
4.主婦や社会人から鍼灸師になるには
主婦や社会人でも、はり師やきゅう師の国家試験の受験資格が得られる専門学校などで学び、国家試験に合格することで、鍼灸師になれます。
主婦業や仕事と通学を両立させたい場合、午前のみ、または午後のみのカリキュラムを実施している専門学校や、夜間部へ通う方法があります。自分のライフスタイルに合わせて両立できるカリキュラムのある学校を選びましょう。
なおはり師、きゅう師の受験資格を得る専門学校は通信教育では受講できません。
5.鍼灸師の仕事内容
鍼灸師は鍼灸治療を行うほか、患者さんの体の不調を聞き出すカウンセリングをはじめ、身体のバランスやエネルギーの流れを見るために脈診をしたり、患者の表情、皮膚の状態や血色、舌の状態などを目で見て、栄養状態や病状を判断する望診(視診)をしたりします。
また、就業先によっても異なりますが受付や事務業務、雑務を行うこともあります。
6.鍼灸師の資格取得までの最短期間
鍼灸師の資格取得までの最短期間は3年です。
厚生労働省によって、はり師、きゅう師の国家試験の受験資格を取得できる認定された学校での就業期間が、3年と定められているためこれ以上短くはできません。
7.鍼灸師国家試験の合格率
鍼灸師となるための国家資格の合格倍率を、はり師、きゅう師別に解説します。
はり師国家試験の合格率
公益財団法人東洋療法研修試験財団の発表によると、近年のはり師試験の合格率は令和3年度(第30回)は74.2%、令和4年度(第31回)は70.4%でした。
第1回からの平均合格率は76.9%です。
きゅう師国家試験の合格率
公益財団法人東洋療法研修試験財団の発表によると、近年のきゅう師試験の合格率は令和3年度(第30回)は76.1%、令和4年度(第31回)は71.7%でした。
第1回からの平均合格率は77.6%です。
試験概要
公益財団法人東洋療法研修試験財団の情報を参考に、はり師試験、きゅう師試験それぞれの試験概要を解説します。
科目
はり師試験、きゅう師試験の受験科目を以下にまとめました。
試験の種類 | 科目の種類 | 科目数 |
はり師試験 | 医療概論(医学史を除く) 臨床医学各論 衛生学・公衆衛生学 リハビリテーション医学 関係法規 東洋医学概論 解剖学 経絡経穴概論 生理学 はり理論 病理学概論 東洋医学臨床論 臨床医学総論 | 13科目 |
きゅう師試験 | 医療概論(医学史を除く。) 臨床医学各論 衛生学・公衆衛生学 リハビリテーション医学 関係法規 東洋医学概論 解剖学 経絡経穴概論 生理学 きゅう理論 病理学概論 東洋医学臨床論 臨床医学総論 | 13科目 |
実施
はり師国家試験・きゅう師国家試験は年に1回、2月下旬に実施されます。
合格発表は3月下旬です。
8.鍼灸師の就職先
鍼灸師は鍼灸院をはじめ、幅広い場所で活躍しています。おもな鍼灸師の就職先を解説します。
鍼灸院
鍼灸院とは、鍼と灸による治療をおもに行っている施設です。鍼灸院は鍼灸師の代表的な就職先と言えるでしょう。
院によっては鍼灸以外の治療メニューを取り入れている場合もあります。
鍼灸整骨院
鍼灸整骨院とは、鍼灸師と柔道整復師による施術を提供している施設です。鍼灸師による鍼灸治療と、柔道整復師による柔道整復術の施術を、患者様の体の不調や状態に合わせて適切なものを選び、提供します。
また、鍼灸や柔道整復術のほか、姿勢の矯正やスポーツマッサージなどの自由診療メニューを提供している鍼灸整骨院もあります。
美容鍼灸サロン
しわやたるみ、むくみへのアプローチといった美容領域に特化した鍼灸の施術を提供するサロンです。
顔面に局所的に血行を良くする鍼や、下肢や体幹の経穴に刺激を入れる灸の施術を提供します。
スポーツ施設
ジムやフィットネスクラブなどのスポーツ施設で活躍する鍼灸師もいます。
スポーツの現場では、スポーツ選手の疲労回復やコンディション維持、故障の治療に特化した鍼灸施術であるスポーツ鍼灸が提供されていることが多いです。
福祉介護施設
鍼灸治療を取り入れている介護施設やデイサービスで、高齢者の方へ鍼灸治療を提供する鍼灸師も多くいます。
鍼灸治療は人間の持つ気のめぐりを調整し、自然治癒力を活性化させる施術です。
いろいろな体の不調を持つ高齢者の方にも鍼灸治療のニーズは高く、高齢化社会を迎えた日本では福祉介護施設でも鍼灸師の需要が高まっています。
教員養成科
鍼灸師の専門学校や大学には、教員養成科が併設されていることも多いです。鍼灸師の教員養成コースもあり、鍼灸師の教員としての知識や技術とともに、臨床経験を積める特徴があります。
現場で実績を積んで教員になる方はもちろん、いきなり教員になる方に向けた実習が整っている科やコースもあり、様々なケースに対応しています。
独立開業
鍼灸師は、独立開業が認められている職業です。一般的には、鍼灸治療院などで数年間経験を積んだあとに、独立開業をするケースが多くなっています。
独立開業には、鍼灸師としての高い技術はもちろん、治療院の経営力や営業力なども求められます。
また、鍼灸治療院の開業形態もさまざまです。自宅の一室で開業する場合もあれば、マンションの一室やテナントを借りて開業する場合もあるでしょう。
地域に根差した鍼灸治療院を開業することで、多くの患者様に親しまれる鍼灸治療院の経営にもつなげられます。
9.鍼灸師の年収
厚生労働省の職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、令和4年度の鍼灸師の全国の求人賃金(月額)は25.7万円、賃金(年収)は443.3万円でした。
実際の給料は就職先や勤務先地域によって異なります。自分の納得のいく就職先を目指すためにも、給料面はしっかりとチェックしておきましょう。なおジョブノートでは鍼灸師の求人情報を給料などの待遇も含め詳細情報を掲載しています。
10.鍼灸師に求められるスキル
鍼灸師には、鍼灸治療に関するスキルのほか、以下のようなコミュニケーションスキルも求められます。
スキルの種類 | スキルの内容 |
傾聴力 | 患者がどういった状態か真摯に受け止める力 |
観察力 | 施術中の患者のちょっとした反応などを観察する力 |
説明力 | 患者への施術内容や治療方針を分かりやすく説明する力 |
患者様へ適切な鍼灸治療を提供するには、患者様の持つ不調や悩みなどを的確に聞き出し、治療の方向性を分かりやすく説明する能力が求められます。
11.まとめ:鍼灸師は今後も高い需要が見込まれる職業
鍼灸師の概要や仕事内容、なるための方法や就職先を解説しました。
鍼灸師の就職先は鍼灸治療院だけでなく、幅広い分野での活躍が期待できる職業です。また、社会人や主婦の方もライフスタイルに合わせた学校へ通い、必要な過程を履修し、国家試験に合格することで鍼灸師を目指せます。
今後の高い需要が見込まれる鍼灸師をぜひ目指してみましょう。
鍼灸師の求人を探す【参照URL】
厚生労働省 就職情報提供サイトjobtag(日本版O-NET)はり師・きゅう師 就業するには?
過去の受験者数 はり師試験 きゅう師試験|公益財団法人東洋療法研修試験財団
第 32 回あん摩マッサージ指圧師国家試験はり師国家試験 きゅう師国家試験 受験案内 2ページ4. 試 験 科 目|公益財団法人東洋療法研修試験財団