柔道整復師は、接骨院などで骨折や脱臼などの治療を行う職業です。
近年では、介護施設などでの就労もあり、高齢化が進んでいる日本では、高齢者の健康サポートなどから需要が高まり将来性のある職業といえるでしょう。
この記事では柔道整復師の現状や将来性について詳しく解説していきます。
1.柔道整復師の将来性が高い理由
柔道整復師は、求人の数も多く近年の健康意識の高まりや高齢化によってますます需要が増してきており将来性が高いといえます。
また、独立開業の権利もあるので、自分の店を持つことも可能です。この章では柔道整復師の将来性が高いといえる理由を詳しく見ていきましょう。
売り手市場
求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数値に有効求人倍率があり、数値が大きいほど求職者に有利な状況といえます。
厚生労働省 職業情報提供サイト 柔道整復師と厚生労働省 一般職業紹介状況 によると柔道整復師に関しては有効求人倍率は令和4年度で3.60倍となっており 、全職種平均の1.31倍 と比べても高く売り手市場ということができるでしょう。
健康に関する意識の高まり
近年ではコロナウイルスの流行もあり、健康意識が高まっています。また、病院に行くほどではないけど体に不調があるという人はまず、接骨院などで治療を受ける人もいます。
健康増進と聞けば運動が思い浮かぶ人が多い傾向です。健康意識の高まりから今までほとんど運動習慣のなかった人が急に運動を始め、ケガや不調を訴えることも予想されるので、柔道整復師の需要はますます増加していくと考えられます。
国家資格のため信頼性がある
柔道整復師は、国家資格のため幅広い年代や客層に信頼されます。
柔道整復師になるには、年に1度しか受けられない国家試験の受験が必要です。さらに国家試験を受験するために、専門学校か大学に3年間から4年間通い指定のカリキュラムを履修しなければならず、誰でも簡単にとれるわけではありません。
国家資格を持っているということは、時間をかけて専門知識を学んでいるという安心感があります。
活躍の場が多い
柔道整復師は、整骨院や接骨院で働く以外にもいろいろな場所で活躍できます。詳しく解説していきます。
①.整骨院・接骨院
柔道整復師は整骨院や接骨院で活躍できます。骨折や捻挫、打撲、脱臼などのケガに対して柔整手技療法や物理療法、運動療法などを用いて治療を行います。
整骨院や接骨院での治療は、医師による治療と違い手術や薬を使うのではなく、本人の自然治癒力を引き出し、痛みや不調を改善させることです。
②.整形外科
整形外科では、骨折や捻挫、靭帯損傷などの運動器の機能改善を重点的に扱っています。これらは柔道整復師としての知識や技術を発揮しやすい領域です。
大きい病院では、さまざまな患者の症例に立ち会えるので、将来に向けてスキルアップを目指す人には向いているといえます。
③.介護現場で働く
柔道整復師は老人ホームやデイサービスなどの介護現場で活躍できます。介護保険法により、介護施設には機能訓練指導員を最低1名以上配置することが義務化されました。
機能訓練指導員は介護現場で機能訓練を指導する役割を持っていて、特定の国家資格が必要です。柔道整復師は機能訓練指導員になれる国家資格の1つなので、介護施設での需要は高くなっています。
高齢社会のなか、介護施設の数自体が増えていくことが予想されるので柔道整復師の活躍できる場はより増えていくでしょう。
④.応急処置ができるスポーツトレーナーへ
柔道整復師はスポーツの現場で応急処置ができるスポーツトレーナーとして活躍できます。骨折や捻挫、脱臼などのケガがよく起こる現場でテーピングや適切なアイシングなどの応急処置が可能です。
近年では”努力”や”根性”といった精神論でなく、科学的なトレーニング方法が取り入れられているため、人体の構造と機能を学んでいる柔道整復師はその知識を活かすことができます。
⑤.機能訓練指導員としても活躍できる
柔道整復師は老人ホームやデイサービスなどの機能訓練指導員として活躍できます。
機能訓練指導員は介護が必要となった人の身体機能に合わせた訓練を行い自立した生活を送れるように支援をする役割です。
また、介護保険法によって定められている職種で柔道整復師などの国家資格を持っている人だけがなれるため、需要度が高いといえます。
⑥.ダブルライセンスで更に活躍の場が広がる
柔道整復師だけでなく、鍼灸師のダブルライセンスを取得することで更に活躍の場を広げることができます。
柔道整復師はケガなどの応急処置に対応でき、鍼灸師は慢性的な不調やケガの予防などそれぞれ出来ることが異なるため、両方の知識を身に着けることで質の高いサポートを幅広い患者に行うことができるでしょう。
また、ダブルライセンスを取得することで手当の額も多くなる場合が多い傾向です。
⑦.独立開業も可能
柔道整復師は独立開業することが可能な職種です。もちろん独立して開業することは成功が約束されているわけではなく、開業後お客が増えない場合もあります。
一方で、人気の治療院になれば一般の会社員などと比べて多くの収入を得ることのできる可能性もあります。そのためにも、治療の手技だけでなくさまざまなスキルを取得しておいたほうが良いでしょう。
2.柔道整復師の現状
この章では、現在の柔道整復師の数や求人数、年収などについて解説していきます。
柔道整復師や施設所の数
柔道整復師の免許を持っている人の人数は、公益財団法人 柔道整復研修試験財団によると令和4年3月31日現在、120,728名です。
また、全国柔製鍼灸協同組合の柔道整復師 施術所に関する統計によると全国の施術所は50,919ヶ所となっていて、2年間で約500件の増加となっています 。
これらのことからも、柔道整復師の需要が高まり将来性があるといえるでしょう。
柔道整復師の求人状況
柔道整復師の求人は東京や大阪などの人口の多い大都市圏で増加傾向です。
求人数の増加はその分野の需要が増加しているといえるので、より活躍の場が広がっていると言えるでしょう。
柔道整復師の平均年収
厚生労働省 職業情報提供サイト 柔道整復師によると柔道整復師の全国の平均年収は443.3万円となっています。また、最も人数の多い月収額は24.0~25.9万円となっているので、年収では約310万円となります 。
求人情報を見るときに注意したいのが「みなし残業代」です。「みなし残業代」とは、最初から残業代を給与に含める制度でそのせいで見かけ上の給与が高くなっている場合があります。
近年は改善されてきているものの、みなし残業代を導入している場合、残業が日常的に発生している可能性があるので基本給や実際の残業時間を確認しておくのが良いでしょう。
3.柔道整復師の今後
現在はさまざまな分野でIT化が進んでいますが、柔道整復師も例外ではありません。この章では、今後柔道整復師にも関わりのあるICTとAIについて解説します。
ICTを利用した受付・事務作業の効率化
ICTとは「Information and Communication Technology」の略で日本語では「情報通信技術」と訳されています。コンピューターを単独で使用するのではなくネットワークを利用して情報を共有することなどの広い意味をもつ言葉です。
ICTが進むことで、予約の受付や管理、カルテの管理などの事務作業が効率化されます。それによって柔道整復師は施術やスキルアップに時間を割くことができるようになります。
AIを利用した高度な分析や施術の実施
昨今話題のAIは、医療の現場にも今後ますます取り入れられていくことでしょう。
AIを活用することで、より正確な診断ができたり今までは選択肢にすら上がらなかった治療法も出てくることもあります。
AIが発展しても人間の手による施術がなくなることはないので、AIに任せられることは任せてしまい、その分空いた時間をより患者へのサポートを手厚くしたり、新しい手技を獲得に使うことができます。
4.今後求められ続ける柔道整復師になるために
現在、求人数も多く将来性のある柔道整復師ですがその状況に甘んじて努力を怠っては、他の人に後れを取ってしまいます。
この章では、他の人との差別化を行うために磨くべき能力を解説していきます。
スキルや専門知識を身に着ける
将来性のある柔道整復師になるには、日々スキルを磨くことが重要です。
先ほども述べたように柔道整復師も施術所の数も年々増えています。活躍の場が増えている一方で競争するライバルが増えているということもできるでしょう。
医療分野では新しい技術や知見が次々と出てくるので、常に向上心を持って自分を磨いていかなければ時代に取り残されてしまうでしょう。
コミュニケーション能力
柔道整復師は、スポーツでケガをした若者や加齢によって運動機能が低下した高齢者などさまざまな患者の治療を行います。施術では問診を行って治療方針を決めていくのでコミュニケーション能力は必要不可欠です。
また、施術中にも患者の不安を取り除くなど、精神面のサポートを行っていくためにもコミュニケーション能力を磨いていきましょう。
柔軟性
患者さんとのやり取りや、施術中に想定外のことが起こっても柔軟に対応するスキルが必要です。
医療の現場では想定外のことが起こるため、柔軟に対応できるよう偏った知識でなく幅広い知識が必要です。
そのためにも、冷静に物事をとらえて柔軟に思考できるように意識してみましょう。
独立開業をするなら経営についても学ぶ
柔道整復師として独立開業を目指す場合は、自身のスキルアップだけでなく経営者としての視点も必要となります。
施術所の数が増えているということは、開業する場合には競合他社が多いということになるので、他の施術所と差別化を図る必要があるためです。
例えば、近くにスポーツの強豪校があれば、スポーツ障害に力を入れたり、高齢者の多い地域で開業する場合はリハビリや日常生活を元気に過ごすサポートに力を入れるのが良いでしょう。
開業して成功するには、複数の届け出などの法律面や店舗の準備、スタッフの育成など、さまざまな要素を学んでいかなくてはならないので、いろいろなことにアンテナを張っていきましょう。
柔道整復師の求人を探す【参照URL】
厚生労働省 職業情報提供サイト 柔道整復師
厚生労働省 一般職業紹介状況
公益財団法人 柔道整復研修試験財団 2.柔道整復師免許証の登録事務
全国柔整鍼灸協同組合 都道府県別の柔道整復施術所(接骨院・整骨院)数について