ケガや病気になると症状の回復や社会復帰のために、リハビリテーションが必要になります。
そのリハビリテーションの業務を担うのが、国家資格「理学療法士」の資格を持った専門家です。
今回は、そんな理学療法士の仕事内容や主な勤務先、資格の取得方法などについて詳しくご説明します。
目指そうと考えている方や、リハビリの仕事に興味がある方は、ぜひこちらの記事を参考にしてください。
1.理学療法士とはどんな仕事?
理学療法士はPT(Physical Therapist)とも呼ばれている医療系国家資格の一つです 。
主に、ケガや病気などで身体に障害のある入院中や通院中の患者に対して「座る」「立つ」「歩く」などの基本動作の回復や向上を目指すリハビリテーションを行います。
また、障害の悪化予防や福祉用具のアドバイスなど、幅広い分野の仕事内容があります。
2.理学療法士の仕事内容
次に、理学療法士の仕事内容について詳しくご説明します。主に以下のような多種多様な仕事内容になります。
・治療計画
・運動療法
・物理療法
・補装具の適合判定
・住宅環境の調整
・他部署やご家族との連携
それぞれの仕事内容について、一つずつ詳しく見ていきましょう。
治療計画
理学療法士がリハビリを実施する前に、必ず最初にすることが治療計画を立てることです。
治療計画の作成は、医師が作成したリハビリ指示書に基づいて、問診・触診・動作確認などを行いながら、身体の状態を把握するところから始まります。
また、基礎疾患や既往歴、生活状況を参考にした上で、身長・体重・血圧・運動機能などを総合的に検査した後に、患者の要望に応じてリハビリのプログラムを設計します。
なお、治療計画は定期的に再評価を行い、必要な場合は軌道修正しながらリハビリを進めていきます。
運動療法
運動療法は、患者の身体を動かすことで症状の改善や予防を図る治療法です。入院中の場合は、早期離床や日常生活の能力向上・維持を目指します。
なお、理学療法士が行う運動療法には以下のような種類があります。
・関節可動域練習
・基本動作練習
・筋力増強練習
・持久力強化練習
それぞれ運動療法の種類について詳しく説明していきます。
・関節可動域練習
関節可動域練習は、関節の動きの改善や拘縮の予防を目的として行います。
・基本動作練習
基本動作練習は、ベットからの起居動作や車いすへの移乗動作、歩行などの移動動作を行います。
また、歩行練習は症状に合わせて、平行棒・平地歩行・階段昇降練習などを行います。
・筋力増強練習
通常以上の負荷をかけて抵抗運動を行うことで、筋力アップや回復を目指します。
また、抵抗運動は、患者さんの症状の状態、体力に応じて等尺性収縮・等張性収縮・等速性収縮を行います。
・持久力強化練習
持久力強化練習は、主に術後や長期間ベッドに寝ている患者が起こりやすい体力低下を改善させる目的で行います。
そのため、最初はベッド横で座位時間を延長させるところから始める場合もあります。
歩行が可能になっている場合は、次第に歩行距離を延ばすことで、持久性強化を図ります。また、全身調整練習や治療体操、呼吸練習の指導なども行います。
物理療法
運動療法とともに症状の痛みを和らげたり、血液の循環を改善させたりするために、物理療法を行います。
なお、物理療法には下記のような機器や方法があります。
・ウォーターベッド
・メドマー
・腰椎牽引器
・低周波、中周波治療器
・超音波治療器
など
補装具の適合判定
大阪府のホームページの補装具費支給の判定、適合判定によると、補装具は次の3つの条件をすべて満たすことが必要です。
“1 障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつ、その身体への適合を図るように製作されたものであること“
“2 障害者等の身体に装着することにより、その日常生活において又は就労若しくは就学のために、同一製品につき長期間にわたり継続して使用されるものであること”
“3 医師等による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること “
そして、このような条件に合う補装具の適合判定には、専門的な知識が求められており、リハビリテーションの専門家である理学療法士が介入して行います。
住宅環境の調整
術後すぐ退院してから療養生活を送っている利用者に対して直接利用者の自宅に訪問し、日常生活のADL向上につながる機能訓練を行います。
また、利用者が安心安全に自宅で過ごせるために、必要に応じて現在の住宅環境の改善やアドバイスをします。
なお、具体的には段差の解消や手すりの設置、介護用ベッドの導入などが住宅環境の調整内容です。
他部署やご家族との連携
理学療法士は患者の生活を支えるため、他部署やご家族とも連携を取りながらサポートしていきます。
特に、装具の使用や介護用品を選定する際などは医師の意見書が必要な場合があるため、医師と連携を取ることも理学療法士の大切な仕事の一つです。
また、退院後は患者とそのご家族が自宅で落ち着いた療養生活が送れるように、作業療法士らと協力しながら自宅の環境調査も行います。
3.理学療法士の勤務先
次に、理学療法士の主な勤務先についてご紹介します。下記のような幅広い分野で働くことが可能です。
・医療施設
・福祉介護施設
・行政自治体
・教育現場・研究
それぞれの職場について、詳しく説明していきます。
医療施設
理学療法士の仕事のなかで最も多いとされているのが、病院や診療所などの医療施設です。
日本理学療法士協会の調査(2022年3月現在)によると、全会員のうち約60%が医療施設に勤務しているほどです。
医療施設で勤務することは、さまざまな症例の患者と接することが多いため、臨床経験を積むことができます。
福祉介護施設
福祉介護施設で、理学療法士が利用者のリハビリに携わる仕事もあります。一口に福祉介護施設といってもさまざまな種類があり、下記のような施設で理学療法士が活躍できます。
介護老人保健施設…65歳以上で要介護に認定された人などが入所する施設
通所型デイサービス…自宅で自立した日常生活を送るために日帰りで通う施設
訪問リハビリ…自宅でリハビリサービスを提供
こういった施設においても、医師の指示により専門的なリハビリテーションを提供できます。
行政自治体
地域によっては地域包括支援センターなど、保健指導を目的として理学療法士が配置されている場合があります。
その場合、理学療法士が個人宅を訪問して利用者の状態を確認し、ご本人やご家族に介護方法や福祉用具などのアドバイスを行います。
また、自治体の介護福祉課や健康企画課等に配属することも可能です。
教育現場・研究
理学療法士は、理学療法士を目指す学生に対して、教員として活躍することが可能です。
なお、教員になるには5年以上の業務経験年数に加えて厚生労働省が指定する講習会受講を満たすなど、いくつかの条件があります。
また、理学療法を極めるために大学院や研究機関に所属して、研究を続ける理学療法士もいます。
4.理学療法士になるには?
理学療法士になるには、国家資格を取得する必要があります。
資格取得には、次のような文部科学大臣が指定した大学や短期大学・専門学校などの養成機関で3年以上学ぶ必要があります。
● 4年制大学
● 短期大学(3年制)
● 3年以上の専門学校などの養成校
● 特別支援学校
理学療法士の合格率は平均して80%前後になるため、数字だけ見ればそれほど難しくない印象です。
まとめ
理学療法士は、病気の回復や社会復帰を目指してリハビリを行う患者のサポートができる大変やりがいのある仕事です。また、試験の合格率も約80%と高いため、資格取得も難しくありません。
しかし、資格試験を受ける前には最低でも3年以上、大学や専門学校などで専門学科や臨床実習をクリアしていく必要があるため、学習のモチベーションを継続することが大切になります。
そのため、理学療法士を目指す方は、将来どのような理学療法士になりたいかを明確に考えて学習を続けていくことも、資格取得に必要な要素と言えるでしょう。
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【引用サイト】
大阪府のホームページ丨補装具費支給の判定、適合判定