理学療法士になるには、国家試験に合格し理学療法士資格を取得する必要があります。
せっかく専門学校などに通って勉強し取得した資格だからこそ、できるだけ長く活用したいと考えている方も多いかもしれません。
今回の記事では、理学療法士は何歳まで働けるかに加えて、理学療法士として長く働くための具体的な方法を解説します。
1.結論:理学療法士は何歳までも働ける
結論から言えば、理学療法士は何歳までも働くことができます。理学療法士の資格期限や定年について解説します。
理学療法士の資格自体期限がない
理学療法士の資格は、養成校で3年以上学んだ上で国家試験を受験し、合格することで取得できます。理学療法士の資格には「〇歳まで有効」といった年齢的な期限はありません。一度取得すると一生有効な国家資格です。
ただ、日本理学療法士協会が提供している認定資格には有効期限があり、常に勉強や技術を磨き続けないと維持できない仕組みになっています。
そのため、協会が提供している登録理学療法士や認定理学療法士などの資格を有していると、協会公認として理学療法士として一定のスキルを有していることを証明できます。
理学療法士の定年は一般的に60~65歳
理学療法士のおもな就職先は病院や診療所といった医療機関です。就職先によって異なりますが、理学療法士の定年は一般企業と同じ、60~65歳に設定されていることが多くなっています。
高年齢者雇用安定法第8条により従業員の定年を定める場合は、定年年齢は60歳以上とすること、さらに定年年齢を65歳未満とする場合には「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置を取ることが義務付けられています。
なお、定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている企業や施設は、70歳まで定年年齢の引き上げや70歳までの継続雇用制度の設置などが努力義務化されています。そのため、今後70歳まで働く理学療法士も増える可能性があります。
2.理学療法士が定年まで働けないと思われる理由
理学療法士は一般企業のように60~65歳の定年まで、施設によっては70歳以上になっても働ける環境が整っています。ところが実際に定年まで働く理学療法士ばかりというわけではありません。
理学療法士が定年まで働けないと思われる理由を順に解説します。
体力的に厳しくなる
理学療法士は、患者さんの運動機能や日常動作の維持や回復のためのリハビリや介助を行います。日々患者さんを支えることも多く、肉体的な負担もかかるのが理学療法士の仕事です。
人間は年齢を重ねるごとに体力が低下してきます。特に腰痛や膝痛を持っている人や、体力に自信がない人は、年齢を重ねることで理学療法士としての業務をこなすことが難しくなることが多いです。
理学療法士の供給が飽和状態
理学療法士は需要に対して供給が多く、飽和状態と言われています。
厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会・理学療法士・作業療法士受給分科会」によれば、理学療法士と作業療法士の供給数は、2040年には需要数の約1.5倍になる との推計が出ました。
理学療法士の数に対して働ける先が少なくなり、採用側も長く働ける若年層を積極的に採用する傾向にあります。そのため、今後は定年近い年齢になってからの転職や再就職が難しくなることも、理学療法士が定年まで働けない理由と言えるでしょう。
経験年数によって給料が上がりにくい
理学療法士が1日あたりに実施できるリハビリの数は制限があります。そのため、理学療法士は収入の増加が難しい職業と言えるでしょう。
また、理学療法士は一般企業よりも経験年数による昇給の機会が少ないです。結婚後家族を養う、子どもの養育費や教育費、自分の老後資金などを考えると、現状の給料のままで働くのは難しいと考える方もいるかもしれません。
役職に就くなど昇給の機会に恵まれなければ、収入を増やすために転職をする理学療法士もいます。
3.理学療法士として長く働く方法
これから理学療法士として長く活躍したい方のために、長く働くための具体的な方法を解説します。
身体・精神のセルフケア
理学療法士は身体が資本となる職業です。年齢を重ねても体力が衰えないように、日頃から自分の身体をしっかりメンテナンスしておきましょう。
自身の知識を活かして、気力トレーニングやストレッチをセルフケアに取り入れて実践すると効果的です。患者さんだけでなく、自分の身体もケアすることで、長く仕事を続けていける身体づくりにつながります。
また、患者さんの心に寄り添いながらリハビリを提供したり、家族や他の医療職とコミュニケーションを取りながら業務を行ったりするため、理学療法士は身体だけでなく心も疲れやすい職業です。
疲れを感じたらすぐに休む、ストレスをためないようにリフレッシュする時間を持つなどして、精神のセルフケアも忘れずに行いましょう。
管理職や役職へのキャリアアップ
一般的な企業よりも昇給のチャンスが少ない理学療法士ですが、管理職や役職へキャリアアップすることで年収アップが見込めます。
たとえばリハビリ科の科長やリハビリ室の室長、主任といった役職に就くことで役職手当が付き、現場以外の業務にも関わることで長く働ける可能性が高くなります。
まずは理学療法士としての経験を積み臨床現場での能力を上げ、さらに医療現場におけるチームワークや管理職として求められる組織をまとめられる力を身に付けましょう。
ただし、理学療法士の役職は年功序列が一般的で、誰でも役職に就けるわけではありません。ベテランの多い職場では、自分が役職に就けるチャンスが少ない可能性があります。
将来的に管理職や役職へのキャリアアップを目指したいなら、新規開業した施設や若年層のスタッフが多い職場へ転職するといった道も有効です。
スペシャリスト資格を取得
理学療法士として長く働くために、専門的な知識や技術を身に付けておくこともおすすめです。
公益社団法人日本理学療法士協会では、より専門性の高い臨床技能を有する臨床心理士の「スペシャリスト」を育成するプログラムとして、認定・専門理学療法士制度を設けています。
認定理学療法士は認定試験合格、専門理学療法士は口頭試問や論文提出などで認定されます。いずれの資格も5年の更新制で、常に勉強を続けなければいけません。
認定理学療法士、専門理学療法士いずれも日本全国の理学療法士の中で取得している人が少なく、希少性の高い資格と言えます。
理学療法士としての転職を目指したり、定年近くまで長く働いたりしたい場合には、認定理学療法士や専門理学療法士の資格取得も検討しましょう。
転職
理学療法士の資格を活かして、ほかの職種へ転職する方法があります。理学療法士資格が生かせる転職先には、以下のものがあります。
・介護支援専門員(ケアマネジャー)
・教員・講師
・市役所の行政職員
・医療機器・介護用品メーカーの社員
たとえば介護支援専門員の受験資格は福祉、保健、医療に関する指定された法定資格を持ち、対人援助業務の経験が5年以上あることで得られますが、理学療法士は福祉、保健、医療に関する指定された法定資格に該当します。
ほかにも病院や診療所以外でも理学療法士がリハビリや理学療法の技術や資格を活かして活躍できる場があります。キャリアアップややりたい仕事の方向性が今の職場と違う場合、転職をするのも理学療法士として長く働く方法のひとつです。
また、定年後に勤務延長制度・定年後再雇用制度を利用する方法もあります。勤務延長制度・定年後再雇用制度によって配置や勤務先が変わる可能性もあるため、環境を変えて長く働きたい人にも向いています。
まとめ:理学療法士は年齢制限なくキャリアの可能性が広い
理学療法士が何歳まで働けるか、長く働くための方法とともに解説しました。
国家資格であり年齢制限もないため定年まで働くことができ、不安な場合でも転職やキャリアアップによってさまざまな可能性があります。
医療機関以外の職場の選択肢もあるため、ぜひ理学療法士の知識やスキルを活かして長く活躍しましょう。
理学療法士の求人を探す【参照サイト】
高年齢者の雇用 雇用する上でのルール|厚生労働省
理学療法士・作業療法士の需給推計について|厚生労働省
統計情報 年齢分布と平均年齢|公益社団法人日本理学療法士協会