理学療法士は、医療機関や介護施設などで患者さんや利用者さんへリハビリを提供するだけでなく、理学療法士養成施設の教員になる道もあります。
未来の理学療法士を育てる教員を目指したい方のために、理学療法士から教員になるための方法や条件、採用されやすいポイントや年収を解説します。
1.理学療法士から教員になる3つの基本条件
理学療法士から養成施設や大学の教員になるための条件を解説します。
その1ー臨床経験
一般社団法人日本理学療法教育学会によれば、理学療法士養成施設の教員となるためには理学療法士資格を取得していること、さらに5年以上の理学療法に関する実務経験が必要です。
そのため、現場を経験した理学療法士が未来の理学療法士に指導するような枠組みとなっています。
その2ー最終学歴
目指したい理学療法士の教員像によって、必要となる最終学歴が異なります。
理学療法士養成施設の内、専門学校の教員になりたい場合には理学療法士資格を取得していて5年間の実務経験があれば、学歴は問われません。
一方で、大学の理学療法学に関する教員になりたい場合は、大学卒業以上の学歴が求められます。
国立研究開発法人科学技術振興機構の求人機構である「JREC-IN Portal」に掲載されているとある大学のリハビリテーション学科の准教授の求人では、応募に必要な学歴・学位として「博士」としています。博士は大学院の博士課程を修了しないと取得できない学位です。
大学の教員となる場合は、ほかの大学教員と同じく大学院卒以上の学歴が求められることが多くなっています。
その3ー演習・履修
一般社団法人日本理学療法教育学会によれば、理学療法士の教員になるには以下いずれかの条件を満たさなければいけません
・厚生労働大臣の指定する講習会を修了する
・大学で教育学に関する科目を4単位以上修めて卒業、または免許を受けた後3年以上理学療法に関する業務に従事し大学院において教育学に関する科目4四単位以上を修め大学院の課程を修了する
厚生労働大臣の指定する講習会には、全国リハビリテーション学校協会などで開催される、理学療法士作業療法士専任教員養成講習会などがあります。
2.理学療法士から教員になる基本条件まとめ
改めて、理学療法士から教員になるための基本条件を整理しました。
理学療法士の教員になるためには、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
・臨床経験5年+専門学校卒または大学卒以上+指定講習会の受講
・臨床経験5年+大学卒+教育4単位
・臨床経験3年+大学院卒+教育4単位
・臨床経験3年+大学院卒+指定講習会の受講
3.理学療法士教員として採用されやすいポイント
理学療法士の教員は、今まで紹介した条件を満たした上で採用試験などに合格した上で採用されます。教員として採用されやすくなるポイントを解説します。
研究論文の発表実績
理学療法学としての論文や学会発表の実績があれば、教員としても採用されやすくなります。特に大学の教員となる場合は理学療法の研究も業務になるため、研究論文や学会の発表実績は必須です。
論文や学会発表の実績は多いほど有利です。なお具体的な論文や学会発表のレベルは、応募する大学、研究所によっても異なります。
留学経験
必須ではありませんが、大学の教員を目指す場合留学経験がある良いでしょう。大学での研究分野では、海外の機関との共同研究や国際学会発表といった、グローバルな活躍が求められる機会も多くなっています。
理学療法士は医療従事者のため、研究または臨床いずれかを学ぶために留学します。留学経験を持っていると、世界水準の研究ができる人材と判断されるため、採用に有利です。
4.理学療法士教員の仕事内容
理学療法士教員の仕事は、将来理学療法士を目指す学生へ授業や講義を行うだけでなく、以下のように多岐にわたります。
・理学療法理論などの授業
・理学療法の実習、実技
・就職指導や相談
・学生指導
・書類や教材作成
・入試広報、学校行事の補佐など学校全体の業務
・臨床業務(系列医療施設がある場合)
・セミナーや研修の講師(系列医療施設がある場合)
実習や実技のほか、パソコンを使ったデスクワークも行います。
5.理学療法士教員の年収
理学療法士の教員の年収を、専門学校教員と大学教員別に紹介します。
専門学校教員年収:300万円~650万円
理学療法士の専門学校教員の年収は、300~650万円であることが多いです。
国立研究開発法人科学技術振興機構の求人機構である「JREC-IN Portal」に掲載されているとある専門学校の教員補佐求人の年収は300万円 ~ 500万円 、別の専門学校の専任教員求人の年収は400万円 ~ 600万円です。
厚生労働省の職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、理学療法士の平均年収は430.7万円です。地域によっても異なりますが、臨床現場の理学療法士よりも教員の方が年収は高い傾向にあります。
大学教員年収:530万円~1600万円
理学療法士の大学教員は、専門学校教員よりもさらに年収が高めです。
「JREC-IN Portal」に掲載されているとある大学の求人では、講師年収500万円~、准教授年収680万円~、教授年収800万円~となっています。
大学教員の場合、国立か私立か、講師か准教授か教授かによっても年収が変わってきます。
6.理学療法士から教員になるメリット・デメリット
理学療法士として臨床の現場から離れて教員になることは、メリットもあればデメリットもあります。理学療法士から教員になるメリット・デメリットをそれぞれ紹介します。
理学療法士が教員になるメリット
教員になることで、休日が増えるメリットがあります。
専門学校や大学は基本的に土日祝日が休みです。一方で病院などの医療機関や介護施設で働くことの多い理学療法士はシフト制で、土日の出勤をすることもあります。体力的にも無理なく、生活のリズムを整えながらの働き方ができます。
また、理学療法士の教員は今までの臨床現場での知識や経験を活かせる仕事です。自分の経験や知識を、臨床経験を持たない学生に教える経験ができ、さらに学生が成長する姿を間近で見られるやりがいもあります。
理学療法士が教員になるデメリット
理学療法士が教員になると、実際にリハビリを行う立場から、教える立場になります。
臨床現場から離れてしまうことになるため、患者さんや利用者さんと関わる機会がなくなり、リハビリを介して患者さんや利用者さんのサポートをすることにやりがいを感じている方には、教員になることで物足りなさを感じるかもしれません。
また大学教員になると学生への講義を行うだけでなく、研究も行います。
研究論文の執筆や学会発表を行うなどで多忙になります。教員のため学生の相談に乗ったり、トラブルが起きたときには解決したりといったことも業務に入るため、労働時間が長くなる可能性もあるでしょう。
まとめ:理学療法士から教員への転職は良いのか?
理学療法士が教員になるための条件や仕事内容、年収や理学療法士から教員になるメリット、デメリットを解説しました。
教員になることで、自分の臨床経験や知識を学生に教え、未来の理学療法士を育成したり、理学療法の研究や発表をしたりといった機会が得られます。
教員は臨床現場で働く理学療法士よりも年収が高い傾向にありますが、なるためには条件があり、満たすための時間や労力が必要です。
メリットとデメリットを良く考えた上で、自分が理学療法士としてどんな道で働くかを決めましょう。
理学療法士の求人を探す【参照サイト】
教員基準について|一般社団法人 日本理学療法教育学会
求人公募情報閲覧 准教授の公募(保健学研究科総合リハビリテーション科学領域/作業療法学)|国立研究開発法人科学技術振興機構 JREC-IN Portal
第3回(2023年度)理学療法士作業療法士専任教員養成講習会情報|全国リハビリテーション学校協会
求人公募情報閲覧 教員補佐(介護福祉学科)|国立研究開発法人科学技術振興機構 JREC-IN Portal
求人公募情報閲覧 専任教員募集 理学療法士(運動器障害領域)|国立研究開発法人科学技術振興機構 JREC-IN Portal
理学療法士(PT)統計データ|厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)
求人公募情報閲覧 理学療法学科 小児・発達系理学療法分野 教授、准教授、又は講師(専任)の公募|国立研究開発法人科学技術振興機構 JREC-IN Portal