ケガや病気の後遺症として続く痛みの治療に、または腰痛や鼻炎、眼精疲労などの慢性症状に有効な治療として知られている鍼灸治療ですが、そもそも治療を受けることができる鍼灸院とはどういった場所なのか、どのタイミングで鍼灸院に行くべきなのか迷うこともあるでしょう。
そのような疑問を解決するべく、ここでは鍼灸院とはどういった場所で、どのような時に行くべきなのか、また鍼灸治療は保険が適用されるのかなどを解説していきます。
これを読めば、鍼灸院の知識が身に付くだけでなく、将来鍼灸院で働くために必要不可欠な患者さんが感じる不安なども知ることができます。
1.鍼灸院とは?
鍼灸院とは、患者さんの身体の不調に対して、鍼や灸を用いて施術を行う施設のことを指します。
鍼灸院と聞くと、腰痛や肩こりなど慢性的な不調を治す施設のイメージが強いですが、近年ではスポーツ鍼灸や美容鍼灸といった、単に治療をするだけではなく、運動能力のサポートや美容効果を目的とする鍼灸院もあり、鍼灸院によって特色はさまざまです。
鍼灸院に就職を考えている場合には、自分がどのような施術を患者さんに行いたいかで、働きたい鍼灸院を探すことになるでしょう。
2.鍼灸治療は効果がある?
鍼灸治療は東洋医学に基づく治療であり、人が本来持っている自然治癒力や免疫力を高める効果があるとされています。
また、病気や症状に直接的にアプローチする西洋医学とは異なり、全身状態を見極めたうえで、間接的にアプローチすることで、結果的に不調の原因となっている要因を取り除く治療方法です。
「効果が見えにくい」、「本当に効果があるの?」と疑問視されることも多いですが、1979年に開催されたWHOの鍼灸に関するセミナーにて「鍼が役立つとされる疾患リスト」が作成されました。
「臨床経験に基づくリスト」として科学的に証明されたものではありませんが、鍼灸治療の現場で効果があるとされた疾患だけでも30を超えていました。
3.鍼灸の施術方法
それでは、鍼灸の施術方法について具体的に見ていきましょう。
3-1.鍼施術
鍼治療では細い鍼を経穴(けいけつ)と呼ばれるツボに刺して筋肉などを刺激します。
治療法には、管鍼法(かんしんほう)、撚鍼法(ねんしんほう)という2種類があります。また、鍼を刺す深さや刺した状態で行う施術(技法)も数種類あり、患者さんの不調の程度や具合、原因よって使い分けるのです。
3-2.灸施術
灸治療では艾(もぐさ)を使って、ツボに熱の刺激を加える施術を行います。
その種類は、艾を直接皮膚の上に乗せる直接灸と、艾と皮膚の間を空けておこなう間接灸の2つに分かれます。鍼治療と同様にツボを刺激することで、症状の緩和や痛みを取り除き、血管の循環を促す効果があるのです。
どちらも、不調の根本原因を突き止め、症状緩和や不調を取り除くことを目的としていることから、鍼灸院では鍼と灸を併用する施術が一般的です。
4.いつ鍼灸院で治療を受けるべき?
ここからは、治療の選び方についてご紹介していきます。
4-1.鍼灸の適応症
肩コリ、腰痛、神経痛、にめまい、耳鳴り、眼精疲労など、例を挙げるとキリがありませんが、いわゆる「自分には分かるけど、他人には分からない痛み、辛さ」を感じる症状は、鍼灸治療の真骨頂を発揮する場面とも言えます。
このような症状は、病院に行き検査をしても「異常なし」と言われ、「一旦鎮痛剤で様子を見ましょう」など、根本原因が分からず、薬を飲んでも一時的な緩和にしかならないなど、なんとも言えない痛み・辛さ・不安に襲われることでしょう。
鍼灸治療は根本原因にアプローチし、原因を取り除く治療として「自分には分かるけど、他人には分からない痛み、辛さ」を感じる症状を良くさせる効果があるのです。
4-2.美容鍼灸
ツボや筋肉を刺激する鍼灸は、血行が促進され、老廃物の排出や自然治癒力、新陳代謝が促進されることで、以下のような美容効果にも繋がっています。
【鍼灸でもたらされる美容効果】
たるみ、ほうれい線の解消 目の下のクマ改善
肌質及びトラブル改善 耳つぼによるダイエット効果
肌のハリアップ、トーンアップ 全身のむくみの解消
4-3.こんな場合には病院に行ってください
さまざまな効果がある鍼灸ですが、即効性と言う点では西洋医学には劣ってしまいます。
例えば、肩コリ、腰痛、神経痛などの慢性的な症状ではなく、誰から見ても具合が悪い、ケガをしているなど以下のような突発的な症状や痛みが出ている場合には、病院に行くべきです。
【病院に行くべき症状例】
事故やスポーツなど外傷によるもの、手術などの処置が必要なもの | 火傷、裂傷、骨折など |
感染症や発熱を伴うもの | インフルエンザ、風邪症状、咽頭結膜熱(プール熱)など |
急な腹痛や胸の痛み | 急性胃炎、盲腸、緊張性気胸など |
その他 | 急な激しい頭痛、吐き気など |
5. 鍼灸院の施術者は国家資格保有者
鍼灸院で施術を行うことができるのは、「はり師」「きゅう師」の国家資格を持つ者のみです。
「はり師」「きゅう師」の資格を取得するためには、鍼灸師を養成する専門学校、4年制大学、または3年制の短大を卒業し、国家資格に合格する必要があります。
また国家資格取得後も、研修等を行い一定の知識・技術レベルに達することで鍼灸院での施術が可能になります。
いずれにしても、鍼灸院で働くことを希望している場合には、まず国家資格を保有することが第一歩です。
6.鍼灸院で健康保険が適用される?
鍼灸院と健康保険適用についてみていきましょう。
6-1.健康保険の適用対象
「鍼灸院で治療を受けたい」と考えるときに、まず思いつくのは「保険適用されるのか」ということです。
鍼灸治療は、以下の疾患及び症状によって保険が適用されるかどうかが決まります。
【健康保険が適用される疾患・症状】
神経痛 | 坐骨神経痛など |
腰痛症 | 慢性の腰痛 |
リウマチ | 慢性で各関節が腫れて痛むもの |
五十肩 | 肩の関節が痛く腕が挙がらないもの |
頚腕症候群 | 首から肩、腕にかけて痺れ、痛むもの |
頸椎捻挫後遺症 | むち打ち症などの後遺症 |
6-2.鍼灸院での健康保険を使う手順
先述のとおり、保険の適用が可能な症状はいずれも、慢性的な症状です。
急性的な症状に伴う処置や治療が終わり、慢性症状を取り除くための治療として保険適用で鍼灸治療を行うことになりますので、まずはかかりつけ医などから同意をもらいます。
それをふまえて、鍼灸院にて保険を適用して施術する際の手続きは、以下のとおりです。
7.鍼灸治療って痛い?
鍼灸治療に興味を持つと同時に浮かぶ疑問はやはり、「はりを刺すのは痛い?」、「お灸ってどれくらい熱い?」という「痛みへの不安」です。
鍼治療での「痛み」と言われるものには、大きく分けて2つあります。
鍼が皮膚に刺さるときの「チクッ」とする痛みと、症状の原因に到達した時に感じる「ズーン」と響く軽い鈍痛のような痛みです。
「チクッ」という痛みは、鍼が毛穴など、痛覚を過敏に感じるところに当たってしまうと起きる現象で、通常ほとんど感じることはありません。
「ズーン」という痛みは、筋肉のコリや血流の悪い場所に鍼が当たった時に感じ、鍼灸ではこれを「響き」と言います。
痛みへの耐性は個人差がありますが、ケガした時のような痛みを感じることは少なく、人によっては心地良いと感じることもあります。
8.まとめ:なかなか治らない慢性症状は鍼灸院へ
「自分には分かるけど、他人には分からない辛さ」である慢性症状は、普通に生活もできますし、大病でもないため「病院に行こう」と思ってもなかなか気が進みません。
そのようなときは、つらい症状を緩和してくれる鍼灸院へ行き、施術してもらうことをおすすめします。
服薬などとは異なり、即効性はないかもしれません。
しかし、痛みを伴わず心地良いとも感じる鍼灸治療は、自然治癒力を高め、健康維持や病気予防などにも効果があります。通院していくうちにふっと症状が軽くなる、「そういえば痛くなくなったな」と感じることでしょう。
これから鍼灸師を目指すあなたも、ゆくゆくは鍼灸院で働く日が来るかもしれません。
鍼灸院に来る方々がどのような症状を訴え、どのようなことを不安に思うのかを理解できることは、患者さんに信頼される鍼灸師の条件の1つです。自分の理想にあった鍼灸院に就職し、患者さんに信頼される鍼灸師を是非、目指して下さい。
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