あん摩マッサージ指圧師は、器具を使わずに「なでる」「押す」「揉む」「さする」などの手技を用いて患者さんの不調を取り除く職業です。
本記事では、あん摩マッサージ指圧師の仕事内容や資格の取得方法、将来性について解説しています。
あん摩マッサージ指圧師は活躍できる場所も多く、将来性もあり患者さんの喜ぶ顔を間近で見ることのできるやりがいのある仕事です。
あん摩マッサージ指圧師に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.あん摩マッサージ指圧師とは
あん摩マッサージ指圧師は器具を使わずに、手を使って患者さんの身体をなでたり押したり揉むことで血行を良くしコリや痛みを和らげる仕事です。
あん摩マッサージ指圧師は「あん摩」、「マッサージ」、「指圧」の3つの技術を用いて治療を行います。
あん摩
あん摩の「あん」はおさえるという意味を持っていて、「摩」はなでるという意味を持っています。
あん摩は古代中国で考案された手法で、身体の中心である心臓から手足の方向へ筋肉を揉んでほぐし血流の改善をする施術です。
マッサージ
ヨーロッパで発祥した手技で、皮膚に直接触れて施術します。
手足の先から心臓にむかって撫でたり摩ったりしながら、血液やリンパの流れを改善させます。
指圧
日本に起源がある手技で、指や手のひらを用いて衣服の上からツボなどを押して圧迫することで筋肉や神経の変調に対してアプローチする手法です。
目や手、足などのツボを自分で押したことのある経験は多くの方にあるのではないでしょうか?
2.あん摩マッサージ指圧師の施術内容
あん摩マッサージ指圧師は、肩こりや頭痛など身体の不調を持った患者さんに対して押す・揉む・さする・叩くなどの手技を用いて施術を行います。
あん摩マッサージ指圧師の手技は、東洋医学の知識を基礎としていて、基本的に施術は器具を使いません。
主に、疲労や肩こりや頭痛、腰痛などの症状に対してあん摩・マッサージ・指圧の手技を用いて血行を改善したり骨格のゆがみを矯正したりすることで症状の緩和や体力回復を図ります。また、症状を改善するために施術前に問診や検査を行うことも重要です。
3.あん摩マッサージ指圧師資格について
あん摩マッサージ指圧師の資格は、国家資格のなかの「業務独占資格」です。業務独占資格とは、その資格を持っていない人が業務を行うことのできない資格です。
この資格を持っていると、あんま・マッサージ・指圧の手技を用いた施術や施術所の開業ができます。
また、あん摩マッサージ指圧師は、医師の指示を受けずに施術をおこなうことができますが、禁忌症の患者さんに対しては施術を行うことができません。禁忌症とは、がんなどの悪性腫瘍や、脳出血などの出血性疾患、脱臼や骨折などの外傷などです。
4.あん摩マッサージ指圧師になるには
あん摩マッサージ指圧師として働くためには、年に1回実施される国家試験を受験して合格しなければいけません。
国家試験は誰でも受けられるわけではなく、高校卒業後に専門学校や大学などで3年間から4年間、規定のカリキュラムを受講し単位を取得する必要があります。
カリキュラムはあん摩マッサージ指圧師の専門的な知識や実習だけでなく、解剖学や公衆衛生学など幅広い知識を学ぶことになります。
5.あん摩マッサージ指圧師の国家試験の科目と合格率
あん摩マッサージ指圧師の国家試験は、受験料は14,400円で毎年1回2月に開催されます。公益財団法人東洋療法研修試験財団の過去の受験者によると、合格率は過去10年間では、60~80%の間で平均して約75%です 。
試験科目は、医療概論や衛生学・公衆衛生学、解剖学、生理学、東洋医学概論・経絡経穴概論、あん摩マッサージ指圧理論及び東洋医学臨床論などの12科目で4択形式の選択問題です。
2023年に開催された第31回の国家試験の結果は以下の通りでした。
試験日 2023年2月25日
受験者数 1,296人
合格者数 1,148人
合格率 88.6%
合格基準 総得点 96点以上/160点 (1問1点)
6.あん摩マッサージ指圧師の就職先
あん摩マッサージ指圧師の主な就職先は、あんまマッサージ指圧治療院や鍼灸治療院です。他にもリラクゼーションサロンや整形外科、リハビリテーション科に就職する場合もあります。
近年では、あん摩マッサージ指圧師の知識を活かしてスポーツで疲労した身体の早期回復の手助けをするスポーツトレーナーとして活躍するケースもあります。
また、あん摩マッサージ指圧師は独立開業することのできる資格なので、自分の治療院を持つことも可能です。
他にも、機能訓練指導員として高齢者施設や介護施設に勤務することもでき、高齢社会で需要が高まっています。
7.あん摩マッサージ指圧師の年収
令和4年賃金構造基本統計調査によるとあん摩マッサージ指圧師の平均年収は443.3万円であり、平均月給は約31万円です 。
全労働者の平均賃金も約31万円 であり、平均的な給与水準といえるでしょう。
上記の値はあん摩マッサージ指圧師だけの年収ではなく、柔整師や鍼灸師なども含んだ値のため純粋な平均年収とは言えませんが、大枠の傾向としてはあっているでしょう。
8.あん摩マッサージ指圧師に向いている人
あん摩マッサージ指圧師は、患者さんと直接触れ合う仕事なのでコミュニケーション能力が必要不可欠です。
患者さんは、日常の疲労や不調を解消するために治療院にやってくるので、リラックスできるように優しく安心できるような話し方や患者さんの不調に寄り添う気持ちが必要です。
また、あん摩マッサージ指圧師の施術は器具を使わずに手で行うので、指や腕を酷使します。さらに、仕事中はほとんど立ちっぱなしになり足腰にも負担がかかるので、体力があり体調管理をしっかりと行えることも大事になります。
9.あん摩マッサージ指圧師に求められるスキル
あん摩マッサージ指圧師として、施術のスキルはもちろんのこと体調に不安を抱える患者さんと上手にかかわることのできる以下のようなスキルが求められます。
傾聴力:患者さんの声に熱心に耳を傾け、患者さんの状態を理解する能力
観察力:施術中の患者さんを観察し、リラックスできているか痛がっていないかなどを把握する能力
説明力:治療院に来るさまざまな患者さんに合わせて施術内容などをわかりやすく説明する能力
施術を行うときは、問診を行って治療方針を決定していきますが、患者さんによっては自分の不調を適切に表現できない人もいます。そのような患者さんに対して上記のような能力が重要です。
往診や送迎がある就職先の場合、ドライバーを自ら行うこともあります。第2種運転免許や原付免許を持っていると求人の選択肢を増やすことができる場合があります。
10.あん摩マッサージ指圧師のやりがい
患者さんから直接感謝を伝えられる、喜ぶ顔を間近で見ることができる、などが一番のやりがいというあん摩マッサージ指圧師は多いでしょう。
あん摩マッサージ指圧師は、患者さんと直接触れ合って施術を行います。来院した時には不調を抱え、暗い表情をしていた患者さんが、自分の施術で不調が和らぎ喜ぶ顔を見ることができ仕事の成果をすぐに実感できモチベーションのアップにつながるはずです。
11.あん摩マッサージ指圧師の将来性
あん摩マッサージ指圧師は、高齢化社会やストレス社会での需要が高まり、将来性が高いといえます。
医療だけでなく介護やスポーツ分野など活躍の場が多い職業であり、独立開業することもできる資格です。
高齢化社会やストレスの多い現代社会では、マッサージなどのリラクゼーションの人気が高まり、あん摩マッサージ指圧師の需要が高まることが予想されます。
現在はマッサージなどの施術は無資格者でも行うことができますが、今後無資格者の施術に関して改善される可能性もあるのであん摩マッサージ指圧師の国家資格を持っていることは有利になるでしょう。
また、鍼灸師とのダブルライセンスを取得することで施術の幅が広がり就職先の選択肢も増やすことができます。
12.まとめ:あん摩マッサージ指圧師はなるまで大変だが、やりがいがある仕事
あん摩マッサージ指圧師は、「なでる」「押す」「揉む」「さする」などの手技を用いて血行や筋肉のコリを改善し不調を取り除く職業です。
あん摩マッサージ指圧師の資格は、専門学校や大学に3~4年間通い1年に1回行われる国家試験に合格する必要があり、気軽に取得することのできる資格ではありません。
しかし、あん摩マッサージ指圧師は医療や介護、スポーツ分野など活躍の場も多く、高齢化社会でますます需要が高まっていくことが予想されます。さらに、あん摩マッサージ指圧師は、開業して自分の治療院を持つこともできるので人気の治療院になれば高額年収を狙うことも可能です。
なにより、あん摩マッサージ指圧師は不調を抱えていた患者さんが施術によって改善し喜ぶ顔を身近で見たり、直接感謝の言葉をもらえることは大きなやりがいとなるでしょう。
あん摩マッサージの求人を探す【参照サイト】
第31回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について|厚生労働省
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