体を施術するお仕事はいくつかありますが、そのなかでも専門性が高い資格として挙げられる「理学療法士」と「柔道整復師」。
そして、疲れた体や歪んだ体を整える役割として多種多様な働き方が可能な「整体師」。
今回は、理学療法士・柔道整復師・整体師の違いについて詳しくご説明します。
こちらの記事で、それぞれの資格や仕事などの違いを確認していきましょう。
1.理学療法士・柔道整復師・整体師の概要
始めに、理学療法士・柔道整復師・整体師の概要についてご説明します。
それぞれの特徴や取得人数、仕事のやりがいなどについて確認していきましょう。
理学療法士とは
理学療法士は、別名Physical Therapist(PT)とも呼ばれており、一言で表すと「動作分析のスペシャリスト」です。
ケガや病気などで身体に障害のある人に対して、基本動作能力の回復や維持、および悪化の予防が主な仕事になります。
リハビリを手伝う人と聞いて最初にイメージするような方が理学療法士といえるでしょう。
また、スポーツ障がいで復帰を目指す選手のリハビリをおこなうトレーナーなど、スポーツ現場での活躍も期待されています。
さらに、近年はリハビリ業務以外にもメタボリックシンドロームなど生活習慣病に対する指導などますます活躍の場が広がっています。
なお、日本理学療法士協会_統計情報によると、2011年の理学療法士の累計合格者数は90,710人だったのに対し、約10年後には計192,327人と増えており約2倍になっています。医療系国家資格のなかでも人気の高い資格と言えるでしょう。
柔道整復師とは
柔道整復師は、厚生労働大臣免許のもと骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷などの施術を行うことができる資格です。
また、柔道整復師は専門性が高いため、接骨院や整形外科を始め、高齢化社会で増えている介護分野でも幅広く活躍できる資格です。
なお、令和4年衛生行政報告例によると、全国で柔道整復師として働く人は78,827人になり、柔道整復を行う施術所は50,919ヶ所に及びます。
この数は、約10年前に比べて就業人数は2万人以上、施術所は約8,500ヶ所以上増加している計算になります。
整体師とは
整体師は、関節や骨格などの歪みを手や足による施術で矯正します。
理学療法士や柔道整復師とは違い特定の資格を取得しなげればなれないわけではなく、無資格や未経験の人でも整体を行うことが可能です。
そのため、施術で対応できる幅は最も狭いといえます。
しかし、整体師の多数は何らかの資格を取得して働くことが多い傾向です。
2.理学療法士・柔道整復師・整体師の違い
次に、理学療法士・柔道整復師・整体師の違いについて確認していきましょう。
主に、下記のような違いがあります。
・国家資格
・施術内容
・施術方法
・医療行為
・主な勤務先
・健康保険の適用
・開業権
それぞれの違いの内容について、一つずつ詳しく見ていきましょう。
国家資格
文部科学省ホームページによると、“国家資格とは国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格 “とあります。
そのため、国家資格を持っていることは、社会からの信頼性が高く、特に医療系の国家資格は技術力や知識力が優れていることを証明するものになります。
そして、理学療法士・柔道整復師・整体師に当てはめてみると、理学療法士と柔道整復師は国家資格が必ず必要な資格になります。
一方、整体師は民間資格でも可能なため、国家資格は必須ではありません。そのため、無資格で働いている方もいますが、理学療法士や柔道整復師などの国家資格を取得した上で、整体師として働いている方も少なくありません。
施術内容と医療行為
理学療法士は医師の指示に基づいて、患者に最も効果的なリハビリを提供します。もちろん、ただ指示に従うだけではなく、治療方針を医師や他の職種と話し合い、最適な計画を立てる手伝いをすることも少なくありません。
一方、柔道整復師は骨折や打撲、捻挫などであれば急性・亜急性に限り、医師の処方なく自ら患者の症状に対して施術を行えます。その他のケースでは、医師の同意を得ることが必要となります。
整体師に関しては、主に骨格の歪みを矯正したり、筋肉のバランス整えたりしながら、身体の不調を改善する目的で施術を行います。他の2職種とは違い、あくまで民間療法の範囲内での施術となります。
整理すると、条件付きであるケースがほとんどではあるものの理学療法士や柔道整復師は医療行為が認められており、整体師には一切認められていません。国家資格を保有しているか保有していないかの違いが最も大きく出る例の一つといえるでしょう。
施術方法
施術方法については、理学療法士・柔道整復師・整体師とも共通して言えることが、薬を使わず主に手技療法で施術をしていくことです。
特に、柔道整復師や整体師として院で働く場合は、主にベッドを用いて手技療法で症状の改善やリラクゼーション効果を高めていきます。
一方、理学療法士は手技療法に加えて、患者の早期回復やADL向上のために運動療法や歩行訓練に加えて、電気刺激などの物理療法を組み合わせてリハビリを行うことが特徴です。
なお、接骨院や整形外科で働く柔道整復師に関しても、手技療法に加えて運動療法や物理療法、あるいは包帯固定なども取り入れながら施術を行うことがあります。
主な勤務先
次に、理学療法士・柔道整復師・整体師の主な勤務先について、それぞれ見ていきましょう。
理学療法士は、主に以下のような勤務先になります。
・病院
・診療所
・医療福祉中間施設
・老人福祉施設
・教育、研究施設
など
特に、リハビリテーションを中心に行う職場が多い傾向です。
次に、柔道整復師は主に以下のような勤務先になります。
・接骨院、整骨院
・整形外科
・スポーツジム
・介護関連施設
・独立開業
など
接骨院や整骨院以外でもスポーツ選手に対してテーピングやストレッチを施すトレーナーとして働くこともあります。
整体師は主に以下のような勤務先になります。
・整体院、整体サロン
・リラクゼーションサロン
・エステサロン
・介護施設、福祉施設
・スポーツジム
など
整体師は必要に合わせて資格を取ることで、介護分野や美容分野まで幅広く活躍することが可能です。
健康保険の適用
健康保険の適用に関しては、理学療法士から受けられるリハビリテーションは、医師の診察が必要になります。
すなわち、リハビリテーションは保険適用で受けられるわけですが、疾患に応じて法律で受けられる条件や日数が決められています。
次に、柔道整復師の保険適用については、整骨院や接骨院で骨折、脱臼、打撲及び捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術を受けた場合に可能です。
なお、骨折及び脱臼に関しては、緊急の場合を除いて、あらかじめ医師の同意を得ることが必要になります。
一方、国家資格ではない整体師の施術は、すべて実費施術になるため保険適用はありません。
開業権
理学療法士・柔道整復師・整体師のなかで、特別な開業権があるのは柔道整復師だけです。
柔道整復師は独立開業が可能な資格になり、資格取得後は一定の条件がありますが、接骨院や整骨院で開業することができます。
同じ国家資格である理学療法士ですが、医師の指示の下に理学療法を提供することが義務付けられているため、理学療法士として開業することはできません。
しかし、整体院のような開業に伴い特別な資格が必要のない形であれば、開業することはできるため、理学療法士の経験を活かして整体師として開業する方は少なくありません。
まとめ
理学療法士・柔道整復師・整体師はそれぞれの特性に違いがあるため、資格を選ぶ際は資格後のご自身をイメージしてみると良いでしょう。
具体的には、勤務先や仕事内容、収入などを考えて、将来につながる施術家のプランを立てていくことが大切です。
ただ、理学療法士・柔道整復師・整体師には違いがありますが、人様の身体に触れることで、疲れや痛みなどの症状を良くしていく目的は共通しています。
そのため、どの資格を取得したとしてもお役に立つお仕事であることは間違いありません。
理学療法士の求人を探す【参照サイト】
統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会
【引用サイト】
文部科学省ホームページ