現在、鍼灸師が働くフィールドが大きく広がっています。「痛みを和らげたい」、「長年悩んでいる症状を改善したい」だけでなく、美容やスポーツ、介護の現場なども就職先となり得ます。
「鍼灸院以外の就職先にどのような選択肢があるのか」、「鍼灸以外も学ぶことができる就職先があるのか」など、鍼灸の資格を生かせる場所がどれだけあるのか気になる方もいらっしゃると思います。
今回は、そんな鍼灸師の就職先10選を紹介します。
この記事を読めば、就職先の仕事内容や特徴をより具体的に知ることができ、あなたが就職活動をする際のイメージを掴むこともできるでしょう。
1.鍼灸師の就職先10選
バラエティに富んだ鍼灸師の就職先をご紹介していきましょう。
鍼灸院・鍼灸整骨院
鍼灸師の就職先1つ目は、王道の「鍼灸院・鍼灸接骨院」です。
鍼灸治療に来る患者さんに合わせた治療を行うことが主な業務ではありますが、開店準備、閉店後の片付け、受付・予約などの事務作業も仕事内容に含まれます。
鍼灸院は地域に密着した個人院が多く、鍼灸接骨院は、フランチャイズ展開しているグループ院も多数あることが特徴の1つです。
特に柔道整復師の活躍の場でもある鍼灸接骨院の場合は、骨折、脱臼、打撲などの怪我の治癒を目的として来られる患者さんが多く、治癒後のケアまたは回復をサポートするために鍼灸を併用します。
王道であり、根強い人気がある理由は、鍼灸及び外傷治癒の知識や経験を積むことができる環境に身を置くことで、知識・スキルのレベルが上がり、他資格の取得や独立開業への準備を進めることができるためです。
病院・クリニック
病院・クリニックで働く鍼灸師の多くは、以下の診療科に就職します。
・整形外科
・神経科
・リハビリテーション科
怪我などをした患者さんの痛みの緩和や回復に向けたサポートとして鍼灸治療を行います。
病院で働く場合には、幅広い知識・スキルが必要です。
なぜならば、病院に通院する患者さんは痛みを和らげることではなく、機能回復を1番の目的としているからです。
また、患者さんと鍼灸師の対個人ではなく、医師、看護師などをはじめとする医療チームとして治療するという点も病院で働く特徴の1つでしょう。
そのため、治療方針に沿って、他メンバーとも連携を図りながら医療チームの一員として、治療に当たっていく必要があり、機能回復などの知識に加えて、さまざまな疾患や症状に対する知識とそれに対応する治療スキルが必要となります。
福祉介護施設
鍼灸師の就職先3つ目は福祉介護施設です。
副作用が少ない鍼灸治療は、高齢者の身体にとって負担が少なく、病気やケガのリハビリテーション、健康維持などに効果があるとされており、近年増加傾向にある介護施設の数に比例して需要が高まっています。
しかし、福祉介護施設自体の求人数は多くありませんので、訪問鍼灸をやっているフランチャイズ鍼灸院へ就職して、介護施設への訪問治療を行うことが一般的です。
リハビリ施設
リハビリ施設では、1施設1人以上の機能訓練指導員の設置が義務づけられています。
機能訓練指導員は、利用者さんが食事や排せつなどの日常動作を可能な限り一人で行い、介護の必要度が高まらないようにするためにサポートを行うことが仕事です。
鍼灸師には枠がなかった機能訓練指導員として働く道ですが、2018年の法改正により、鍼灸師にもスポットライトが当たりました。
これは、心身のリハビリ、病気のケア、誤嚥(ごえん)防止などの介護を目的とした人材だけでなく、「なんとなく身体がだるい、痛い、検査をしても原因がはっきりしない」といったような痛みを緩和するケアを目的とした人材確保も必要だと認識されたことが理由にあります。
痛みや原因不明の症状で思うように体を動かすことができない人のために、鍼灸師として力になれることは、大きなやりがいになることでしょう。
プロスポーツチーム
スポーツトレーナーとして以下のチームで働く道もあり、疲労回復やケガの予防をサポートすることが主な仕事です。
・プロ野球やJリーグ、bリーグなどのプロチーム
・企業の実業団チーム
・大学、高校などのチーム
スポーツチームで働くためには、個人事業主として業務委託契約を結び、そのチームスタッフとして所属する場合がほとんどです。スポーツチームへの就職は、求人サイトへの掲載がほぼないため、鍼灸師としての実績と人脈が大きなポイントとなってきます。
まずは、スポーツ選手が通院する鍼灸院・鍼灸接骨院に就職し、患者さんとして訪れるスポーツ選手への施術、大学や高校などのチームで派遣施術を行いながら鍼灸師として経験を積んでいくことが必要です。
また、スポーツ医学や栄養学など、鍼灸師以外の知識も身につけることで、さまざまな角度から選手の体づくりやケアに携わることができため、信頼も得やすいでしょう。
フィットネスジム
ジムを併設している整骨院のように、スポーツ選手が通うジムでは総合ケアを行っていることもあります。
こうしたジムに就職する場合は、お客様が安全にトレーニング器具を利用できるように使い方の説明はもちろん、目標とする体までに必要なトレーニングメニューや食事提案するなどの業務もあります。
鍼灸師で培った医学的知識をボディケアやボディメイクに発展させていくため、他就職先と比べると鍼灸施術を行う頻度は多くないかもしれません。
美容鍼灸サロン
美容鍼灸サロンは、鍼灸師の就職先として一般的になりつつあります。
ジョブノートに掲載されている鍼灸師の全求人数の約5.5%を占めており、8000件以上ある求人のうち500件が美容鍼灸の求人です。
美容鍼を用いた施術はもちろん、お客様へのカウンセリング、電話対応、予約管理なども主な仕事です。単に痩せたい、小顔になりたいなどの外見変化が目的ではなく、冷え性改善や血色アップなど体質改善をして結果的に外見の変化を望む方も多くいます。
また、美容鍼灸は鍼灸業界の中でも需要が高いことから、大手鍼灸院グループなどでは通常の鍼灸施術に加えて美容鍼灸に力をいれているところも多く、研修内容も充実していることが特徴です。
リラクゼーションサロン・エステサロン
東洋医学を元にしている鍼灸治療は、アロママッサージやカイロプラクティック、内臓などの活発化を促すリフレクソロジーなどとも相性が良いとされています。
体の内側、根本から改善するケアが注目を集めていることもあり、リラクゼーションサロンでも、鍼灸師が重宝されるようになりました。鍼灸師の国家資格を持つセラピスト、エステティシャンとなれば、他のセラピストなどとの差別化も図ることができます。
また、女性の鍼灸師にとっては、女性が働きやすい職場環境であることは、長く働き続けるうえで重要です。
女性スタッフの多いエステサロンやリラクゼーションサロンであれば、結婚や出産などのライフステージに合わせた働き方が可能であり、育児休暇などの福利厚生が充実しているなど、先々の事を考えた就職先としてもメリットがあります。
養成校の教員
鍼灸師の養成学校で教員として教壇に立つことも就職の選択肢としてあります。
鍼灸師として就職後少しずつ学ぶ臨床経験も、教員養成課程では知識・臨床経験の技術を2年間でぎゅっと詰め込み、習得するカリキュラムになっているため、より実践的な鍼灸治療の勉強、鍼灸師としてレベルアップをしたい方の入学も多いです。
鍼師、灸師の国家資格取得後、鍼灸の教員養成課程を開講している専門学校もしくは大学院でさらに2年間の勉学に励む必要がありますが、鍼灸師として働く道ではなく、鍼灸師を育てる道を職にする選択肢も良いのではないでしょうか。
独立開業
鍼灸師の就職先最後は、独立開業です。
この記事を読んでいるあなたも鍼灸師としてキャリアを積んだ後は独立開業したい!と思っているかもしれません。
開業資金の準備や、経営知識の習得、患者さんの信頼を得るためにも、まずは実務経験を積む必要がありますが、複数の鍼灸院を経営するフランチャイズ鍼灸院などでは、院長やマネージャなどの経営も積めますし、独立支援などの制度を設けている医院もあります。
将来的に独立を考えているようであれば、そのようなキャリアを経験できる場所、制度が充実している鍼灸院などに就職すると良いでしょう。
2.まとめ:自分の適性のある分野を見つけていこう
鍼灸師と言っても、ひとえに鍼灸治療だけが仕事ではありません。
開店・閉店準備や事務作業など、いわゆる裏方仕事も多く、全体の業務の半分を占めることもあるでしょう。
そのため、就職先を探す際に忘れてはいけないことが1つあります。
それは、就職の目的を持つことです。生活のため、お金を稼ぐことはもちろんですが、何のために鍼灸師になりたいのか、そしてその目的を達成するためにどのような職場で働きたいのかを考えましょう。
目的が明確になっていれば、数ある求人の中から「ここで働きたいかも」と思う求人を直感的に見つけることができますし、就職後に「思っていたのと違う」と感じることも少ないはずです。
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